書道の力

墨

良い墨を使うことは、書道においてとても大事なことです。古くから東アジア地域で、筆記材料として使われてきた墨について見ていきましょう。墨汁との違いや、墨の製造工程などを紹介したいと思います。本格的に書道をするのであれば、墨にもこだわってみるといいでしょう。

墨汁との違い

墨汁とは、学校などの習字(書写)の授業でよく使われる、容器に入った黒いインクのことを言います。着色剤の役割をする煤(すす)に、安定剤として合成樹脂粉末を加えて、水に溶かしたものが墨汁になります。また、墨汁には墨が固まらないように、塩化ナトリウム含まれています。水を使ってすらなければ使えない固形墨と違い、好きなときに簡単に書くことができます。

墨汁のメリット

正月

墨汁は墨をする手間がなく、すぐに書くことができます。色に関しても濃くなったり薄くなったりせずに、一定の色を保ちます。値段も安く、購入しやすいのが特徴です。


墨汁のデメリット

墨が散ったり流れたりしやすく、滲むと黒い点ができてしまうので注意しなければいけません。また、墨汁は化学製品のため、筆が傷みやすくなってしまいます。

松煙墨と油煙墨

墨はその材料によって、「松煙墨」と「油煙墨」に分けられます。それぞれ、どんな特徴があるのでしょうか。

松煙墨

松煙墨は、松の木を燃やしたあとの煤煙で作られます。特に脂の多い古い木から採れた煤が良いと言われ、中でも生松(いきまつ)から採れたものは最高級品として扱われています。艶やかさはありませんが、深くて重みのある味わいで多くの人気を集めています。この松煙墨は10年以上の年月が経つと、青みを帯びることから「青墨(せいぼく)」と呼ばれます。

油煙墨

油煙墨は、植物の種から植物油や鉱物油を採取し、それらを燃やして得られる煤煙で作られます。植物油、鉱物油ともに様々な種類がありますが、一般的に上質と言われるのは、菜種油から採取した油煙になります。油煙墨は艶やかで色も濃いですが、あまり深みは感じられません。植物油や鉱物油を高温度で燃やしてできた微粒子の煙墨で作られたものを「茶墨(ちゃぼく)」と言います。

墨の製造工程

ここで、固形墨の製造工程を紹介しましょう。いくつもの工程を経て、固形墨が出来上がります。

煤を採取する

素焼の皿に植物油を入れ、灯芯を燃やして、素焼のフタに付いた煤を採取します。主に菜種油を使います。

膠(にかわ)を溶かす

膠(にかわ)

原料の膠を二重釜に入れて、長時間煮ます。膠とは、動物の皮由来のコラーゲンを含むたんぱく質の一種になります。


練り合わせる

煤と膠の溶液を混和機にかけて、練り合わせます。墨の質を左右する大事な作業です。練れば練るほど、よくのびて書きやすい墨になります。

型入れをする

練り上がったものを、さらに手で練っていきます。その際、膠のニオイ消しに香料を少し入れよく揉み込みます。そして、小さな塊に分け、重さを量り、木型に入れます。型入れするときに空気が入らないよう、よく揉み込むことが大切です。型入れ後、プレスにかけて30分経ったら型出しします。

乾燥させる

墨を型出しして1日乾燥させたあと、型からはみ出ている“ミミ”を削ります。それから、木灰の入った箱の中で墨を乾燥させます。この灰乾燥が終わったら、自然乾燥へと移ります。

洗う

乾燥後、墨の表面に付いている灰やホコリを冷水で洗い落とし、すぐに表面の水分を布でしっかり拭き取ります。その後、再び乾燥させます。

磨く(研ぐ)

墨

乾燥後、墨を炭火であぶり表面を少し柔らかくして、ハマグリの貝殻で磨きあげます。これを“研ぎ仕上げ”と言い、「紅花墨」が代表的です。ですが、一般的な墨は磨かずに薄い膠液を塗ります。これを“生地仕上げ”と言います。


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